職業適性について


色間違いを起こすのは、主に強度の色覚異常です。
しかし、軽い色覚異常の場合でも色を見分けることは正常者よりも困難です。 例えばランタンテスト(赤・緑・黄の光を見て色名を答える検査)で、完全に正しく答えられるのは色覚異常の中で2%もいません。信号を注視する時間が正常者の2倍以上という報告や、信号灯の色の位置を変えると判断できないという実験もあります。
一見何事もなく運転しているようでも、実は点灯している位置や周囲の状況などを見て、正常者よりもはるかに注意深く判断しているのです。
このことは信号だけではなく、製品の色分けなども正常者よりも時間がかかるのが一般的です。正常者ではあり得ないような間違いを起こす場合もあります。
ですから、職業運転手や色を扱うことの多い職業につくのはなるべく避けたほうが本人のためでしょう。ある程度の社会的な制限は、必要だと思われます。一部の職種では公的な制限があるので、以下に一覧を示します。
細かい変更があることが多いため、あくまでも目安であり、職業適性についてはその都度確認する必要があります。

色覚による制限がある職種 航空機乗務員、航空管制官、海技士(航海)、小型船舶操縦士、機関部船員、海上保安官、海上保安官(航空)、 動力車操縦者※、警察官、皇宮護衛官、入国警備官、 自衛官(航空以外)、自衛官(航空)、消防官

中村かおる:色覚異常の職業適性.眼科54:1003-1012.2012


色覚に対して公的な制限のある職種は徐々に減ってきています。しかし、実際には就職後に色誤認を克服できず、転職を余儀なくされる人もいます。職業制限のあるなしに関わらず、色覚異常の程度によっても適正は変わり、以下が目安となっております。

異常3色覚でも困難を生じやすい職種 鉄道運転士※、映像機器の色調整、印刷物のインク調整や色校正、染色業、塗装業、滴定実験
2色覚には難しいと思われる職種 航空・鉄道関係の整備士、色見本のない色指定を伴う業務、 商業デザイナー、カメラマン、救急救命士、看護師、臨床検査、 歯科技工士、獣医師、美容師、服飾販売、サーバー監視業務、 懐石料理の板前、食品の鮮度を指定する業務
2色覚でも少ない努力で遂行可能な職種 色見本などを携帯して色指定を行う業務、医師、歯科医師、 薬剤師、教師、調理師、理髪師、芸術家、建築家、 電気工事士、端末作業を伴う一般業務
2色覚でも全く問題ない職種 モノクロ文書による一般業務、その他色識別を必要としない業務(色以外の情報がすべて付加されている業務含む)
「色覚検査のすすめ」より引用

色の誤りは、小さいもの、暗い場所、見る時間が短いとき、焦ったり疲れたりしているときは起こりやすいので、特に注意が必要です。先天色覚異常の人にとって不可能な職種は限られますが、小さな失敗や困難は生じる可能性があります。特に見分けにくいものの例としては、ON/OFFのランプがあげられます。これはほとんどが赤、黄、緑で表示され、私たちの身の回りにあふれています。

※令和6年7月1日に国土交通省から動力車操縦者運転免許の受験資格等の見直しがあったため、これに当てはまらない可能性があります。詳細については 国土交通省のサイトをご覧ください。

個性として自覚すること

色覚異常はその人の個性として自覚することが大切です。
たとえば音痴な人は自分では音痴だとなかなか気づきませんが、他人から指摘されて初めて気づきます。歌手になりたいと思っていても、音痴だということを自覚できれば別の道を進むことも考えられるでしょう。
社会の中でも職業の制限などはなくしていくべきですが、色の判別が重要な職業において「不利」であることには違いありません。「不利」であることを自覚せずに、その職についてしまった場合、音痴の人にうまく歌うように強制するのと同じように無理な判断を強いられることになります。それが後々悲劇を生むことがあるのです。
本人も社会も色覚異常をひとつの個性として受け入れ、誰もが「色が不得意だ」と声をあげられる社会にしていくべきなのです。